2024-12-01から1ヶ月間の記事一覧
プロローグ 一話/始まりの地平は須く 二話/交える戦線 暗澹に渦巻く 三話/底生に立つ乱転の黒翼 三.五話/間話 四話/拙き心は鏡に叫ぶ 五話/深く昇りしは絶望 六話/真なる戦司 六.五話/間話 七話/終止決戦 八話/破狂絶淵 最終話/これは果てのない旅路
「レルム! やったな!」 「継ぎ接ぎだったけど。上手くいってよかったよ」 二人は早くも任務の達成感に浸っている。 洞窟もヴァザークの巨躯に耐え抜き、崩落せず済んでいた。彼は遺骸すら残さず、不気味な汚泥を最後の抵抗のように撒き散らし、消滅した。 …
巨大だった。何より理性を感じられない。純粋な破壊衝動だけが、その意識を執拗に引き結んでいた。 「レルムッ!!」 レルムは再び横に突き飛ばされた。庇ったシンは汚泥の豪腕に捕えられてしまう。 体勢を立て直したレルムは即座に反撃を加えた。 円転する…
時間は確認していない。ただ、周囲は少しづつ朝焼けに染まっている。 小動物たちの鳴き声は、普段の朝ならどれほど心地よいものかと日常への飢えを覚えさせた。 先行していたレルムが捉えていたのは薄暗い洞窟。 KRとやり取りした時のポーズに倣い、レルムは…
「シン。最後に聞いておくよ。踏ん切りはついたかい?」 ヴァザークの下へと向かう折、レルムは問いかけてきた。 急ではあるが、覚悟していたことだ。このまま戦いになり、追い詰めても、重要な場面で行動できなければ意味がない。 分かっていても、脳内には…
突然現れた怪異たちは雑魚だった。 生きて帰さないはこけおどしなのだろう。しかし、時間稼ぎには充分だ。 レルムとシンは完全にヴァザークを見失った。 静かになった戦場。粘着質な黒の液体が四散しており、臭いはなくとも不快感を煽り立てる。 肩で息をす…
いつの間にかシンの周りに姉弟が集結している。何より弟と同様、姉の瞳は羨望と期待に輝いていた。 多様な戦地を渡り歩けば、体験談には事欠かない。情景、人種、地域と本の中でしか語られず、またその情報群から逸脱した内容は姉弟たちに強い興味を抱かせて…
「やぁ。無事で何よりだよ」 「囮役ってのも案外悪くないな。命知らずな代わりにいくらでも自由が許される」 レルムとシンが合流した。生い茂った緑の中で朗らかに戦友との再会を喜ぶ。 「ただ……分かってはいたけどボク自身もそう簡単に心変わりはできないら…
時間は少し遡る。 列車に揺れる二人は談笑を交わしていた。経歴や在り方を語った分、壁もなくなり、肩の荷が降りたような空気感だ。 そろそろ目的地へ着く頃合いだろうか。シンは伝えるタイミングを探っていたかのように、勢いよく話題を切り出した。 「レル…
馬車は宙を舞ったが、地面に落下することはなかった。 「緩やかなる降着(アリフリンド)」 レルムが即座に機転を利かせ、水のウルティマで馬車を保護し、弱めた風を利用して着地させる。 中の姉弟も無事だろう。衝撃は免れた。 傭兵たちは目の前から歩んでく…
心地よい振動に、次々と流れていく風土たち。世界の多様な表情を窺わせる光景に、鼻歌を奏でながら楽しむ。 そんなレルムは目的地の移動として、列車に乗り込んでいる。転移を使えないのは任務の性質上、仕方ないことだろう。 そう割り切る反面、薄暗い箱の…
悲鳴と慟哭が鳴り止む。息苦しい程の静寂だけが、その場に秩序を描いていた。 出血で赤く染まる視界が、ようやく情報を受け入れだす。 やがて、認識した光景は地獄そのものだった。 広がる数多の血の池。明らかな致死量でありながら、体を血溜まりに沈ませる…
序 『訪れしは光の世界』 https://kyomunohate.hatenablog.com/entry/2024/12/19/224252 破 『落ちゆく光 上がる帳』 https://kyomunohate.hatenablog.com/entry/2024/12/19/224336 急 『満ちた闇に光落とす月』 https://kyomunohate.hatenablog.com/entry/2…
「……? ここは」 気づくと朝だった。 場所は教会。昨日の夜に起こった状況と、今の状態に何らズレはない。 失った右腕に目を瞑りながら下に目をやる。しかし、血痕は一切なかった。不気味な周囲だったが、リツは大事なことを想起する。 シェリルがいない。目…
選定から時間が経ち、夜になった。 シェリルは明日にも王国へ旅立つという。騎士の存在もあり、あの後彼女に声をかけることができなかった。いや、住む世界が変わった以上、安易に話しかける自分が烏滸がましく感じてしまったのかもしれない。 家に戻り、悩…
少年に両親はいない。 その代わり、村の人間全員が少年の家族のようなものだ。 それが彼の平穏だった。 人の優しさに身近で触れるからこそ、彼は心優しい人格を得る。 困っている人は見過ごせない。彼の口癖はそうだった。他人事には思えないのだ。豊かな感…
『基本情報』 名前:クルザイン・エプマフ 異名: 出身:ノルフェイン大陸 所属:VICE 『贋』『彁』合同部隊 "カナード" 『生体情報』 種族:魔族 性別:女 年齢:23歳 生年月日: 身長:167cm 体重:46kg 『性格』 ☆好きなもの アガート様❤️ ☆嫌いなもの 男 ☆概要 ポ…
「ぬ」 「んん?」 ピコン、と二人の可愛らしいケモ耳が跳ねた。 運命というほど大仰ではない。しかし、何か別の感覚が、二人の魂を引き寄せていた。 「匂う。匂いますなぁ。あなた。もしかして結構すごい人?」 「ほほーぅ。私様の凄さに気づくとは。ただの…
「ねぇ、あの話どうにかならないの?」 気品のある女性が男に話しかけた。 男は整えた髭を撫でながら、眉間に皺を寄せている。座っている椅子に背を沈めると、蓄積した嫌な疲労が如実に感じられた。 「……どうにもならない。私たちの意志がこれに反映されるこ…
「リリちゃーん。今日はなんだかご機嫌だね」 「わかる? 流石はベルね。私が認めただけあるわ」 「あれ? なんか立場逆転してる?」 ゴーレムであるベルベットは、リリ・テレーズとは先輩後輩の関係だ。 今日はなんだか後輩であるリリの表情筋が緩い。 「ま…