「なーチカ。なんか騒がしくね?」
「ホントだ! なんだろ? 誰か来てるのかな? ライリー知ってる?」
「いやいや俺が訊いたんだから知ってるわけ」
妙にザワザワとしている人だかり。不思議そうに見つめる二人。
そこに一人の男が通りがかる。
「あ! レルムくんじゃない?」
「やぁ、二人とも。今日は賑やかなんだね」
「いや、それがなんですよレルムさん」
ライリーは自分たちも事情を知らないことを語る。
「ここから中央の様子は見えないのかい?」
「いや〜。やっぱ体格のいい人多いからちょっと難しいかも」
「悔しいなぁ。僕も入りたかったんだけど」
「え、レルムくんってイチャイチャされたい系なの?」
「もちろん。やっぱり周りにいた方が人の温かみって感じやすいでしょ?」
ライリーとチカは目を見合わす。
「そんなことないと思うけど」
「えぇ…急に真顔で反応しないでおくれよ」
「とにかくとにかく! 私もあの輪っかの中見たーい!」
「チカがここまで興味湧くってなかなかだな」
「だってだって! すっごい可愛いモデルの人とか来てたら気にならない? もうすんごいボッキュンボンだよ!? ボッキュン、ボンッ!」
レルムとライリーは同じ想像を膨らせまる。
「そ、それは気になるな」
「うんうん。僕も協力を惜しまないよ」
チカはガッツポーズする。
「よっしゃ! なら中を覗く作戦立てよ!」
「つったってなぁ。あの人だかりまるで移動しないし」
「僕らの技術が試されるね」
「いやいや。私たちだけで攻略する気はありませんよ?」
「ん? もしかして妙案があるのか?」
「ズバリ! そこらへんを通りがかった人に頼む作戦!!」
「レルム。どうしよ。俺自信なくなってきた」
「諦めるのは早いかもよ。いい案じゃないか」
「ちょっと片言なの余計怖いんだけど」
早速、チカは周囲を観察し始めた。
「ねぇ! あれってウォーカーくんじゃない?」
「彼、確か特殊な生命体を従えてなかった?」
「ビンゴ! ちょっと大きな子呼び出してもらって足場になってもらお! おーい! ウォーカーく……」
ウォーカーが突然逃げ出す。
「だから! プニートニフさん! 急に召喚獣に乗って追いかけ回さないでって言ってるじゃないですかぁあ!!」
強風が周囲を舞って、静かになる。
「……ありゃ」
「取り込み中のようだね。残念」
「そういう時もある」
「うーん。どうしよ」
「ねね! あそこにいるのってアルデスくんじゃない?」
剣を携えて汗を拭くアルデスが目に入る。
「彼は背が高かったね」
「誰か一人でもいいから肩車してもらって確認する作戦!」
「まぁいいんじゃないか? おーい! アルデス……」
すると彼の隣に一人の金髪の少女が現れる。
一方的に少女がベタベタとし、困った様子でアルデスはその場を離れた。
「頼みづらいね」
「そうだった……リリちゃんちょっと依存系女子だった……」
「すげー不穏なんだけど。とりあえず他の人探そう」
とにかく歩いている人をあたった。
ウルベルトはやたらゲッソリしていた。
グリムは応じたが「きょーみねー」と一蹴した。
ヒートは「やるんですね!? 今、ここで!!」と意味のわからない発言をして却下された。
ベルベットはシリウスにパシられてそれどころではなさそうだった。
リオンはずっと電話していた。
モーガンは「ごめんね! 急用!」と言ってプニートニフに追われているウォーカーを尋ねて消えた。
ジジは馬券を手に、黄昏ていた。声をかけづらい。
エレクは「すまねーな。ちょっと余裕ない」と言って逆に残念そうだった。
ルヴァはレルムが声をかけると恥ずかしそうにして逃げてしまった。おい。
ウルファはものすごいご機嫌で声をかけられなかった。
「……これもう駄目じゃない?」
「そんなーー! 気になるぅううう!」
ジタバタするチカ。
「なんとかなればいいのだけどねぇ」
「チカ。次声かけるやつ最後な」
「チェ」
「まぁまぁ。なんて言ってる間に頼れる人が来たよ?」
「ホントだーー! アギト班面々〜!!!」
メディコ、ドロシー、レヴォ、スコヴィル。どうやら班長であるジョウは不在だ。
「なんやなんや! めっちゃ楽しそうなことしとるやん!」
「うほー! これ、これなんかあるよ! ありますよ! 気になる匂いがする!」
「でしょ、でしょ!? でもね。あの人だかりのせいで見えないんだー」
チカがモジモジと懇願するような視線を向ける。
レヴォが顔を引き攣らせた。
「じゃあな。俺らも忙し」
「待ちーーーレヴォやん」
「ぐべべべ!! マフラー握るな! やめやめやめろ!!」
「こういうことに首突っ込んでこ! その方が人生おもろいで!」
「あのな。俺らは慈善団体でもなんでもない。そういうのは人に頼るんじゃなくて、自分たちでなんとかするもんだ」
「いけずやなぁ」
「ごめん、レヴォくん。なんとかできないかな?」
「レ、レルム。すまないが君の頼みでも俺は」
「この通り!」
「「この通り!!」」
レルムに続いて、チカとライリーが同じ手を合わせるポーズを取る。
レヴォは頬をヒクヒクさせた。
「レヴォ。いいって言ってるみたいですね!」
「メディ! 俺はまだ何も言ってな……」
「ほな! レヴォやん。レルムっち肩車せな」
「なんで俺が!」
「いいからいいから!」
というわけでメディコがチカ。
ドロシーがライリー。
レヴォがレルムを肩車することになった。
「こちらライリー。なんか見える?」
「こちらチカ。んー、ちょっと見通し悪い」
「こちらレルム。ちょっと姿が見えてきたかな?」
「おい。間近で無線ごっこするなら落とすぞ」
「もー! レヴォくん分かってなーい! こういうのが楽しいじゃん!?」
「そうそう。やはり、これが醍醐味だよね」
穏やかに笑うレルムにゲッソリするレヴォ。
「あ! キタキタ! なんか前の扉から人出てきた!」
「三人? でも誰だ。全員服に袖通してないけど」
「アレは三英雄だね。僕ら超ラッキーかも」
「さんえーゆー?」
「英雄機関の人。そこそこ名が知れ渡ってるエリート英雄だね」
「うわ〜! そんな人なんだ。でもみんな若いな〜。あの女の子なんて私と同じくらい?」
「ちょっと真ん中の男ヤバそう」
「アレはヤバいね。爽やかな顔して何人も食ってるね」
「分かるの!?」
「もちろん。あぁいう類の男はたくさん見てきたから」
「もういいか?」
レヴォは苛立ちながら言う。
「うん! 大満足!」
三人を降ろすとみんなで談笑する。
「三英雄ですか? あーなんか本で読んだことある程度」
「ええやんええやん! 貴重な体験したいうことや!」
「それで三人はこれからどうするんですか?」
メディコが聞くとチカが答える。
「次の任務まで期間あるし、カードゲームでもしないかって言ってたとこ。ね、ライリー」
「だな。良かったらレルムとみんなもどう?」
「やるやるー! じゃ、レヴォやんは料理担当ー!」
「はぁ!? なんで俺が!」
「レヴォくん。頼むよ」
キラキラとしたレルムの表情。
レヴォは"逆らえない"。
「……ウス」
「そういうことでー! みんないくでー!」
「「おーっ!」」
なんだかんだみんなでカードゲームすることになった。
しかしアギト班は明日の任務に響くと怒鳴り込んできたジョウさんに回収された。恐らくレヴォの差金。
そして、レルムとチカとライリーは翌日までゲームに耽っていた。
今日もナイツロードでは色んなことが、起こる。
終わり